本を読む本 M.J.アドラー、C.Vドーレン、外山滋比古,講談社学術文庫


1940年米国で刊行され、日本へは78年に初版が発行された読書術の本です。最近、とみに売り上げを伸ばしているという事。勉強熱心なビジネスパーソンが増えているということでしょうか。

本を読むのに技術なんていらないと長年思っていた私ですが、科学論文を読むようになったことから、そうではないらしい、と漠然と思い始めていたこともあり、目から鱗の内容でした。小説や文学作品を読む事と、知識を得る読書は違うということに何故気がつかなかったのか、不思議なほどです。
アメリカにいた際に取ったライティングの授業でも、同じようなことを感じていた気がします。作文技術を知っているか知らないかで、文章の伝達能力も大幅に向上するようです。

本を読む本 (講談社学術文庫)の中心対象とする本は、知識を得る読書です。娯楽のための読書に関しても触れられていますが、言及しなくても良いでしょう。

内容のキーは、読書には、以下の4つのレベルがあるということ。同時に行える読み方もあれば、一つずつ時間をかける必要がある場合もあります。

初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書

点検読書では、表題や序文を、目次を調べることで、短時間で内容を把握すること。
分析読書では、本の構造を知り、扱う問題点を知り、内容を解釈し、正しく批評すること。あくまでも、著者が何を言いたいかに主眼がある。
シントピカル読書では、一つの主題に着いて、何冊もの本を関連づけて読む事。読者の問題意識が重要。

分析読書とシントピカル読書は、読み方が異なるため、同時に扱うことはできない。このことは、論文を書くためには知らねばならない基礎であるだろうけれど、私は、最近になってようやく自分で発見していたことだった。一冊すべて読む必要は無い。同一主題でも同じ用語が使われているとは限らない。

読書技法を学ぶ必要性は、私がしてきたような回り道をしないですむという利点があります。

また、ぜひ読んでみてほしい箇所は、日本人の読書について、外山滋比古氏によるあとがきです。

日本人の読書は、濃厚な精神的要素を漂わせる。宗教的色彩を帯びる読書であること。求道的であること。叙情読書であること。悪文の翻訳が主流だった一時期のために、難解信仰があること。

など、自分の若い頃の読書を振り返っても、納得のいくことが多々あります。国語の時間の読書が、まさに外山氏の言う「日本人の読書」を促進させるものばかりであったことに、今更のように気づかされます。それはそれで楽しい授業だったのですが、読書術を学ぶ事無く、小説等の内容読解ばかりに力が注がれていたのは、非常に残念なことであると思わざるを得ません。一つ上級の読書をしたいと考えている人にお勧めの書籍です。

お薦め度☆☆☆☆☆