湖水祭(上・下) 平岩弓枝 文春文庫 1987

白夜の北欧を舞台にしているということで興味引かれて読み始めた湖水祭。一つの日本人の殺人事件から物語が展開し、心の浅黒い登場人物や、一癖も二癖もある登場人物たちが、愛憎劇を繰り広げます。日経新聞の2008年7月の「履歴書」に執筆していた方だったため、一度も読んだことのない作家でしたが、一読してみました。

登場人物達は、コペンハーゲンのKongens Nytorvや、クロンボー城ストックホルムフィンランドを行き来し、その間に複数の人物が次々に殺されていきます。裕福な家族が中心人物であり、国内外を行き来し、コペンハーゲンにいると思われた人物がフィンランドで見つけられたり等のプロットに無理がないように(?)工夫されています。

舞台が海外、北欧であるということと、内容はあまり関連がなく、一年かけて新聞に連載されていたということから解るように、所々無理につじつま合わせしているような印象を受けます。筆者の調査旅行目的で舞台を北欧にしたのかと勘ぐってしまうのは、失礼でしょうか。終盤も怒濤のように物語が流れ、無理矢理ハッピーエンドにしてしまった印象がぬぐい去れません。いくつか気になる人間関係も解決されておらず、私としては、後味があまり良くない作品でした。

ただ、海外生活をする日本人の状況がよく描かれており、また、なじみ深いデンマークの通りやホテルの名前が出て来たりと、別の意味で興味深い内容であったことは確かです。