悩む力 姜尚中 集英社新書 2008

悩む力 (集英社新書 444C)は、「悩むこと」を肯定的に捕らえて、悩んで、それでいいのです、ということを読者に示してくれています。夏目漱石マックス・ウェーバーといった巨人が、同じように悩んでいたということから、「世の中すべて金なのか、何のために働くのか、なぜ死んではいけないのか」といった数々の悩みを、二人の巨人の視点から解いていきます。

この姜尚中という方は、東大の教授ですが、韓国人の両親をもつ日系2世にあたります。そのために、悩むことも多かったと述べていますが、もともと、悩むタイプの人だったのでしょう。私は個人的に、夏目漱石や、マックス・ウェーバーは、あまり好きなタイプではありません。「自我の肥大」が目に付いて、私には苦しく思えるのです。同様に、姜尚中という方も、自分でも言っているように自我が強いので、ナイーブな意見が多いような気がしました。

しかしながら、中で論じられていること、述べられていることは、非常に示唆に富み、考察の価値があるものだと思わされます。特に、私自身、何のために働くのか、といったことから、なぜ自分は満足できないのか、ということで悩んできていますので、目から鱗が落ちた言葉も沢山ありました。悩むことは、精神を消耗しますし、できれば悩まないで生きたいものです。しかしながら、悩んでしまう以上、その悩みを明快に解析してくれる本書は、一読の価値ありです。