天才! 成功する人々の法則、マルコム・グラッドウェル、勝間和代(訳)、講談社,2009.

天才! 成功する人々の法則は、今をときめく勝間和代が翻訳した本として、一躍有名になった本。彼女の翻訳については賛否両論ですが、私は好きです。プロの翻訳家といわれている人の本でも、読みにくいものがある一方で、彼女の翻訳は非常に読みやすく、かつ、筆者への尊敬のまなざしにあふれています。

自分が将来何をしたいのかわからない、でも、成功したいと考えている人、文化の違いが成功に関係あるんじゃないかと思っている人、自分は間違った両親の元に生まれてきてしまったと思っている人、...是非読んでみてほしい本です。得るものがあるはず。

私がこの本をお薦めしたい理由は、この天才! 成功する人々の法則の主張が、私たちの毎日の生活の糧になると考えるからです。この本が伝えたいのは、一般的に言われている知能指数の高い人は賢く成功するという方程式は、実はそれほど頼りになら無い場合があるということ。また、もともと持っている能力よりも、その能力が開花するだけの環境が重要であるという点だと考えています。グラッドウェルは、コミュニティに注目していますが、環境が大切だという点では、以前に紹介した天才の時間、竹内薫、NTT出版、2008が述べている「一つの仕事に集中せざるを得ない天才の時間」が重要である、という主張ともつながる点があります。

グラッドウェルが伝えたかったこと

日本語のタイトルは、天才! 成功する人々の法則となっていますが、英語の原題は、Outliers - the story of successです。タイトルからもわかるように、この本は、天才の話ではなく、成功者の話なのです。そこで、成功者になるために、重要な、かつ私が個人的に興味深いと思われるグラッドウェルの主張は、以下の点です。

1. 時代・環境・コミュニティが自分の味方をするという幸運に恵まれること。

2. その分野で一流になるには一万時間費やす必要がある。一日、8時間取り組んで3−4年。一日3時間取り組めば、9年以上かかる計算。それぐらい大量の時間を、時代・環境・コミュニティのおかげで幸運にも「対象」に費やすことができたからこそ、成功へとつながったのである。

私は、この二つの点は、運が必要なことは、本が示すところでもありますが、ある程度、自分で創り出すことも可能だと考えています。たとえば、あるコミュニティに所属するということ、そのコミュニティで多くの時間を費やすことは、成功するための秘訣といえないでしょうか。まず、そのためには、自分が一流になりたい場のコミュニティを探すことが重要ですよね。

「若者に向けた自助努力論は間違っている」

最後の解説で勝間氏が述べている「若者に向けた自助努力論は間違っている」という論は、非常に勇気がわきます。

これまで天才や偉人に関する分析は、伝記などに見られるように、その本人個人に対する分析に偏りすぎていた。
しかし本当に必要なのは、個人を超えた視点である。その個人がどのような時代背景の中に生まれ、どのような教育を受け、どのような経験をつんだ結果成功したのか。...努力をすれば、必ず報われる。夢を持てばかなえられる。...答えはもちろん「NO」である。...環境要因が後押ししなければ、なかなか成功することはできない。

残念ながら、現状では、各個人に与えられる機会は不平等なのである。しかし、だからといってその不平等状態をそのままに放置しておくことは、人道上もまた、国全体の発展の可能性を考えてもゆるされないことだろう。

ぜひ、読んでみてください!