千葉忠夫,世界一幸福なデンマークの暮らし方,PHP新書,2009.

世界一幸福な国デンマークの暮らし方 (PHP新書)は、コペンハーゲンの知り合いから借りて読んだ本。正直、メディアで見聞きする千葉忠夫氏の言質、特に「デンマーク賛美」傾向には、在住者として同意できない点が多く、自分で購入して読んでみようとは考えもしなかった。読了し、記載されていることに誤りはないことを確認したが、マイナス面への言及は正当にされておらず、アンバランスな印象は否めない。氏の根幹にながれる日本をよくしたいという想いには、大いに賛同するものであり、ゆえに、より正当なデンマーク評価を求めるものである。

そして、デンマーク社会福祉を学んできた現在、日本を住みよい国にしたいと、いち早くその目的を達成したいと思っていますが、いまだ志半ばです。もし、私にデンマークと日本とどちらが住みよいかと聞かれたら「デンマーク」と答えます。でも、デンマークと日本とどちらが好きかと聞かれたら「日本」と答えます...p.204
あなたと共に、次世代の日本人が世界に誇れる住みよい国日本を実現するために、私は戦い続けます。p206.

この本を薦めるか?

デンマークの国民は、なぜ自分たちは幸せだと考えるのか、デンマークがなぜ「世界一幸せな国」なのか、その理由の片鱗が見えてくるという点で、デンマーク福祉国家に興味のある者には一読を薦めます。千葉氏のデンマークの描き方は、特に、デンマーク人がいかに自国を見ているのかを理解する点で非常に役に立つと思う(それだけ、同氏がデンマーク人化しているということの説明にもなる)。日本がデンマーク式の社会・医療・福祉を追及することは難しくとも、参考になる点は、多々あるでしょう。何を幸せと考えるか、個々が意識し考えるためには、まず、「幸せだ」と考えている国民は、なぜ「幸せ」なのか、理解することが必要だと考えます。

千葉忠雄様への手紙

デンマークの医療・福祉には、もちろん日本が参考にすべき点が多々ありますし、世界的に見ても、優れている枠組みを持ってると、私も考えます。しかしながら、現地に住んでいなければ見えてこない課題が多々ありますし、そのことをデンマーク在住の千葉様であれば、よく理解していることでしょう。デンマークの良い点は、参考にすべきですが、日本に紹介する際には、その良い社会福祉構造も完璧ではないということも、同時に言及すべきではないでしょうか。夢の国が存在すると思わせるのは、欺瞞ではないでしょうか。現地の日本人が、デンマークで幸せを感じているでしょうか?デンマークの社会の枠組みは日本を幸せにするでしょうか?