山田大隆,心にしみる天才の逸話20,講談社ブルーバックス,2001.

心にしみる天才の逸話20―天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード (ブルーバックス)は、Creativityに関心を持ち始めてから一貫して興味を持っているいわゆる「天才」の人となりを知るために手に取った本。20人の天才が紹介されており、各天才の紹介は非常に短いのであるが、本書のテーマである逸話に引き込まれます。ニュートンやダビンチがメモ魔だったということや、野口英世が実は意地っ張りだったとか、。。。以前に紹介した類似の天才関連本天才! 成功する人々の法則、マルコム・グラッドウェル、勝間和代(訳)や、天才の時間、竹内薫、NTT出版、2008 で紹介されているように、天才は変人であり、努力家であり、運を味方に付けた人だったようだ。何もせずに天才であることはないということを再認識するとともに、それぞれの人が自分なりの成功の法則を見出していたようです。その成功法則が適切な科学的方法であり、思考方法であった場合に、長期にわたり成功していったといえるようだ。

科学者を目指す者へ

いくつか納得させられた筆者の言葉があるので、メモしておきます。科学者を目指す者の心構えとでも言えるでしょうか。

成功者パスツール(病原菌発見せずともワクチンを作りあげた)の項で、失敗者野口英世(病原菌を発見できず)の比較をした筆者の言葉です。

野口は、光学顕微鏡に固執するあまり、その病原体の発見を第一とする研究手法を最後まで信じて疑わなかった。これに対しパスツールは、原因があれば結果があるという因果関係に重点を置いた。そして、病原体が見えていようがいまいが、手法そのものは変わらないとの確信のもと、狂犬病ワクチンを作り、ウイルスによる免疫学を確立したのである。
ここに西洋と東洋の科学研究手法の違いを見る。科学で大切なのは、或る意味でここの事実より科学的方法や思考方法なのである。この科学哲学の有無に降り、同じウイルス学および免疫療法の入口にいて、野口は病原体を発見できず失敗し、パスツールは病原体を見ずとも成功したのである。
今日でも、日本の科学研究や科学教育は、事実のみにこだわりすぎ、最も大切な科学的思考法や科学哲学に欠けて、両力の割に成果を上げてないい面がみられる。(p220-221)

周期表を発見し、未発見の元素を予想したメンデレーエフ。運が味方した好例といえるでしょうか。

..「テーマ探し」は、上昇志向を持つ科学者にとって最初の重要な仕事である。偶然とはいえ、メンデレーエフはタイミングよくこの初仕事をこなし、周期表の作成という目標が定まったのである。(p253)

ニュートン

...ルネッサンスの大発明家レオナルド・ダ・ビンチもニュートン同様に膨大なメモを残している。この二人を合わせみると、天才はけっしてとつぜん作られるものではないことを痛感する。誰もやらないような、並はずれて緻密なメモの膨大な積み重ねこそ、彼らの独創力のみなもとだったのである。

さらに有名なあの言葉もニュートンのものだったと初めて知った。

「私がほかのひとより遠くを見ることが可能だったのは、私が巨人の方に立ったからである。...私が世間からどのような目で見られているか知らないが、私は、海岸で美しい会や滑らかな小石を求めてさ迷い歩く少年と同じであり、私の眼前には、未知の真理をたたえた大海が横たわっている。」


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