安井秀行,自治体Webサイトはなぜ使いにくいのか, 時事通信社, 2009.

著者である安井秀行氏にお会いする機会があり、アスコエの活動を聞き、自治体Webサイトはなぜ使いにくいのか?―“ユニバーサルメニュー”による電子自治体・電子政府の新しい情報発信に関心を持ちました。

アスコエは、遅々として進まない日本の電子政府の取り組みを、民間から変えることになるかもしれない「ユニバーサル・メニュー」を使った自治体の情報化を提唱しています。本書は、地方自治体の情報化における課題や、アスコエで行っている「ユニバーサルメニュー」の試みを具体的に、かつ実践的に描いています。特に自治体の情報担当者ばかりでなく、情報担当者の予算を握る方たちにも読んでもらいたい一冊です。

なぜこの本を薦めるか

自治体サイトの課題として、下記の2点が挙げられています。

  • 情報報が探せない
  • 情報を理解できない

更に、背景にある課題として下記の3点が挙げられています。

  • マーケティング視点が欠けていること
  • 自治体組織構造の課題
  • ユーザビリティ視点の欠如

日本の電子行政というと、セキュリティなど技術の話やどのような機能が付帯しているかという議論になりがちですが、実際は、行政がするべき情報の集積地としての役割が果たされていないことが現状の課題であるということがわかります。個人情報を扱う情報群は、個人情報保護の問題などに十分配慮した対策が求められますから、導入が遅くなっても仕方のないこと。実際に電子政府進展度が高いと言われるデンマークにおいても、全ての個人情報関連がオンラインで機能しているわけではないことを考えると、今、日本の電子行政においてやるべきことは、下記の2点に集約されると思われます。

  • 現状の認識

― 電子化の目的(日本独特の理由でも構わない)

電子行背にかかわる者でなくても、現状がどのようになっているのか、何が本質的な課題なのか、では、どのような電子政府(電子行政サービス)が欲しいのかを考えるきっかけになるという意味で、本書を薦めたいと思います。