渡邊恵太, 融けるデザイン, 株式会社ビーエヌエヌ新社, 2015

融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論の渡邊恵太さんを知ったのは、渡邊さんが、高校生の頃執筆したレポートを拝読したのがきっかけ。それ以来、慶應義塾藤沢に進学され、そのまま慶応で研究者を続けられていた。気になるHCI研究者のうちの一人である。

HCI研究をされている方は、融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論をぜひ一読されるのが良いと思う。また、おそらく本書は、技術やインタラクション周りに関心のある一般へ向けて書かれたものであると思われ、本来であれば、技術主導のサービスや製品を作るIT,ICT業界の方が読んでくださると、新しい発見があるのではないか。

 私が個人的に面白かったことがいくつかある。

1. ひとつ目には、融けるデザインを読むことで、今までの渡邊さんの研究結果とその背景にある思想が見て取るようにわかるという点だ。また、多くの分野で日本の研究は独特で、海外にいると見えてこないことがたくさんある。そんな意味でも、渡邊さんの研究を見ることは、日本の動向や考え方が見えてくるから興味深い。

2. また、なんとなく考えていたけれども、文字化してこなかったことを文字化し、図に示している点も興味深い。特に「体験の3レイヤ」:現象レイヤ、文化レイヤ、社会レイヤの図は、今後気に留めていきたいと考えている。

3. さらに、インタラクションにおける身体性の捉え方も、興味深い。

自分の手足はいつもどうだろうか。制御できていると思っているのではないだろうか。しかし、逆ではないだろうか。つまり制御できているからこそ、「自分の」手足ではないか、ということだ。


「投げたボールはどこまで身体か?」という命題によって、筆者は制御できている範囲が身体であり、ボールが見えている範囲が身体であると考えるようになった。