佐宗邦威, 21世紀のビジネスデザイン思考が必要な理由, クロスメディアパブリッシング, 2015.

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由は、 著者が知り合いで、ビジネス書ランキング上に食い込んだという評をたまたま日本に帰国した際に聞いて、読んでみようと思った。実際、日本語でデザイン思考やコンセプト創出の教科書的な書籍を探していて、その参考になれば良いと考えてみてみたとも言える。

目次の「第6章 デザイン思考は幸せに生きるためのライフスタイル」というところにも興味があった。

どのあたりがオススメか?

1. ビジネスで論理的思考の訓練をされてきた人たちに、デザイン思考的な考え方を説明するためのヒントになりそう。

本書にも書かれているようにビジネス的MBA的観点は、デザイン思考的なアプローチとは全く異なる。そのために、MBA的訓練を受けていた人に、デザイン思考のアプローチを説明するのは困難である。筆者の佐宗さんは、もともとロジックの世界で統計に基き、トレードオフの関係性に留意し、ビジネスを進めてきた方なので、どのようなアプローチで、どのように説明することで、左脳人にアプローチするべきかのヒントがたくさんある。

2. 効果的にデザインを進めていくための具体的な方策が示されている。

デザインとは、非常に時間がかかり、手間がかかる方法ではあるが、右脳を活用する手法、ツール、環境を理解しておくことで、効率的にデザインに取り組むことができる。そして、どのようなペンを選び、どのような紙を準備するのかということまでの、具体的案提案が示されていて、取り掛かりやすい。早速、トレーシングペーパーを活用し、自分のスケッチを書き写し、スライドに手書きイラストを活用させてみようと思う。

3. 幸せに生きるための指針となっている。

実は、書籍を手にとって目次を見たときに、失敗したと思った。どう見ても、教科書的な書籍ではないことがわかったからだ。ただ、その後、「第6章 デザイン思考は幸せに生きるためのライフスタイル」というくだりを見て、もしかしたら、自分が考えていた「幸せとデザインとの関連性」を、言語化して述べてくれているかもしれないと、期待して読み進めていった。私も、「デザイン思考は幸せに生きるためのアプローチ」であると常々考えていたためだ。残念ながら、私が考えているのとは異なる視点で、デザイン思考が幸せに生きるための指針となると考えているのだとわかったが、佐宗氏の指摘も、励みになる立ち位置だと思う。

ちなみに、私は、繰り返し、理解しようと努め、試み、失敗し、改良を重ねるというプロセスは、自分を見つめ直し、自分が実際に何をしたいのか、どのように進めるのがいいのかといことを考えるために必要なプロセスであると考えている。これは、デザインプロセスの根幹でもあり、対象をサービスや製品から、社会や自分に置き換えたにすぎない。デザインプロセスを自分の毎日に取り入れることで、私はより充実した毎日にしていくことができる、だからこそ、デザイン思考は幸せに生きるために役立つと考えている。

総合的な感想

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由という題名にも表れているように、今後のビジネスに必要なスキルセットの一つとして、ビジネスの視点からデザインの重要性について一貫して述べられていて、立ち位置が非常にわかりやすく、またわかりやすく、読みやすい。また、筆者が自分自身の体験として語られているために、ビジネス的観点をもってデザインに関心を持った人たちにとって、非常にとっつきやすいのではないだろうか。

もう一度全体を通して読むかどうかはわからないけれども、それでも役立ちそうなヒントがたくさんあった。おそらく今後も、情報探しにパラパラ参照することになると思っている。

 また、デザイン思考に触れたことのないビジネス脳の人たちに、デザインという思考方方法に触れさせ、理解させるためには、最高の書籍だろう。