岡壇, 生き心地の良い町. この自殺率の低さには理由がある, 講談社, 2013.

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)があるは、デンマークを訪問されていたとある大学の教授が、デンマークと本書に描かれている町には共通点があるのではないかと言っていたことが気になっていたからだ。

デンマークは幸せの国と言われ、本書で取り上げられている徳島の町は、自殺率が非常に低いと言われる町だ。

本書を読むことで、デンマークはなぜ幸せの国なのかということのちょっとした示唆にもなっているし、どのように生きることが幸せにつながる(かもしれない)、という点がぼんやりと分かる。

特に、「病」は市に出せという言い回しがとても印象が強い。デンマーク人も問題があるとすぐに周りに言うからだ。問題をか抱えていることが公然の秘密ならぬ、事実になっているので、下手な勘繰りをすることなく、必要な場合には、周囲が穴をカバーすることができている。そして、執着心がない人たち(向上心がない)という点も共通しているなぁ...

p.47海部町にまつわるこのようなエピソードに一貫してあるのは、多様性を尊重し、異質や異端なものに対する偏見が小さく、「いろんな人がいても良い」と考えるコミュニティの特性である。それだけではなく「いろんな人がいた方が良い」という考えを、むしろ積極的に推し進めているように見えてならない。

 

p.86 学校のクラス内には特に仲の良い子がいなくても、家に帰れば近所の年長年少の子供たちと野球チームを組み、その練習が楽しいので孤独感はない。このように、ちょっとした逃げ道や風通しをよくする仕掛けがあること、複数のネットワークに属していることが、コミュニティにおける人間関係の硬直化を防いでいると考えられる。

 

 p.178 人との絆が自殺対策に置ける重要な鍵であるとする主張自体は、まったく間違っていない。...その言葉を引用するだけであたかも何かを伝えた気になって安心してしまい、思考停止してはいなかったかということである。