デービッド・アトキンソン. イギリス人アナリスト日本の国宝を守る.講談社α文庫. 2014.

事あるごとに、目にしていた本書、イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書)、を今回初めて手にとってみた。最近日本の伝統工芸保存に関心が出てきたことから、今まで読んでみようかなと思っていたけれども、購入に至らなかった本書イギリス人アナリスト 日本の国宝を守るを手にとってみることになった。

 こういう本(日本の批判)はきっと書きにくいんだろうなと思いつつも、非常に筋がとっていてわかりやすく、日本の改善点を建設的に数字から示しているという点で、評価されていることに納得。

私も日本が全ていいとは思わないけれども、やはり母国であって好きな国であるので、批判が続くと反論もしたくなってくる。ただ、何も日本だけがうまくいってないわけではない...と思いつつも、的を得ている点も多く、確固とした方向性を持っているこのアトキンソン氏が文化庁長官とかになって、文化財保護に動いてくれないかななど、思うのであった。

また、米国の手法を学んだというアトキンソン氏のリーダーシップの考え方にも、いたく同意する。

「私はコンセンサスというものは、さほど重要なものであるとは思いません。あれは時間の浪費の原因のようなものですから」....コンセンサスを取るために議論を尽くしていたところで、結局それは組織を大きく変える「決断」に結びつきません。「決められない政治」や「決められない経営」を招くだけなのです。...イギリスで、サッチャーは、「コンセンサスポリティクス」を終わらせた人物として知られています。p.108

 納得がいかない点ももちろんあった。例えば、イギリスの文化を2年間学んで理解できるわけはないなどおっしゃていたが、外からみたからわかることもある。外の人の方が、その価値を見出しやすいということもあるだろうと思うのだ。もちろん本質を理解するには、25年でも足りないかもしれない。ただ、私が、アトキンソン氏が素晴らしいと思うのは、イギリスの文化を理解し、米国の経営手法を理解し、それを日本でローカライズして、小西美術工藝社を立て直したところだ。