電通と博報堂は何をしているのか. 中川淳一郎, 星海社, 2017

ちょっと電通博報堂が気になっていた時に偶然見つけた本、電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)。あまり私が知りたいことは書いてなくてその意味ではがっかりだったし、予想外に二つの会社に同情を感じることになってしまった(いやー、本当に働いている人たちにとっていい会社なんだな!)。野次馬根性で読むのはいいかもしれないけれども、恨みがあってどうにか敵討ちをしたいとか、秘密を知りたいと思ったらあまり読む意味ない。

 電通博報堂が扱った広告は、日本のあらゆる場所で見ることができる。素晴らしいなと思うものがある一方で、なんだか言い回しは美しいんだけれども薄っぺらくて表面的で「俺ら広告業界が、この業界事情はあまり知らないが社会の流れ的にこれが重要だと思うメッセージをこいつらのために打ち立ててやったぜ!」的メッセージがビンビン伝わってきて、膨満感を感じることもある。特に最近は、旧態然として凝り固まっており中間層や若者は新しいことも何もやらせてもらえない会社(顧客)なのに、「お客様との共創により」とか、Future makingだとか「新しい我が社の企業戦略です、ドン」と広告で打ち出したりするのを見ると、あぁきっと電通博報堂のスーパーデザイナが「これを御社に!」と込み込みセットでお渡しした結果(つまり共創でもなく、相手をきちんと理解もせず、美しくカタチを作り上げたに過ぎない一方通行の仕事)にしか思えない。広告業界の人に一存するんじゃなくて、もっと企業は自分たちで真剣に企業戦略を考えるべきであり、広告の人たちは彼らの考えをきちんと文字やビジュアルに落とし込むサポートするべきなんじゃない?と、しばらく前から「打倒電通!」を仕事のキャッチコピーにしようかなと思っていたところだった。

そんなことを考えている時にたまたま見つけた「電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)」の本。暴露本っぽい装丁で、どんな秘密が書かれているんだろうとドキドキしながら読んでみた。でも実際、読んでみた感想としては、「なんだ結局普通のちょっと無理して力技で仕事をする体育会系企業なのね(そしてみんな自分の会社大好き!)」というがっかりの結果になった。そして、電通博報堂をより愛おしく(働いている人社畜すぎて可哀想)思えるようになってしまったという元々の目的からは真逆の結果になったということでもある。

今の両企業の私の理解は、仕事のために滅私奉公をし、実直に社畜となり、ビジネスの最大化を図る体育会系集団に過ぎない。アウトプットとして良いものを出したとしても、その秘密は単に「体力勝負」の結果に過ぎず、賢い人たちの賢い仕事の結果ではない。そして良い仕事ができている人がいたとしてもそれは一部のスターデザイナだけであり、結局巨大企業には、スターたちを支えるヒエラルキーが構成されているに過ぎない(でも本人たちは満足だから私が文句言う筋合いはない)。

いつか内部事情をきちんと理解して評価できるところを見つけたいと思うが、しばらくは無理そうだ。人や社会に影響を及ぼすことができるという意味で、大きな社会的責任がある企業だということをもっと認識したらいいのに。