リーンスタートアップ, エリックリース,日経BP,2012

デザインシンキングイノベーションに関心のある人たちに、是非とも読んでもらいたい「リーンスタートアップ
 
無駄のない企業プロセスでイノベーションを生み出す、というサブタイトルで出されているリーンスタートアップは、イノベーション・スタートアップ周りでよく聞くようになった今更聞けない各種用語の出所でもあり、MVP(必要最小限の製品)ピボット(方向転換)などが多くの事例とともに解説される。

 最後の伊藤穰一さんの解説が私にとってはとても分かりやすかった。「根源的な考え方は決して新しいわけではない」ということだ。リーンスタートアップアジャイルと同じコンセプトあり、ただ、対象がソフトウェアだけでなく、プロダクトそのものの開発や企業のあり方にまで広がっているという点が新しい。全く異なるビジネスの進め方がいかに今の時代に重要であるかを多くの事例から示し、さらに頭に残りやすいキーワードが散りばめられていて、理解が深まりやすいのもいい。

MVPピボットといったキーワードはとても良くできていて、記憶に残りやすいし、わかりやすい。そして、今となってはイノベーションやビジネス戦略に携わる人たちの共通言語になっている。「このサービスのMVPはなに?」の様に。
 
ただ、読んでいても理解がしずらく、あまり頭に入ってこなかった。これは、自分の頭のせいなのか翻訳のせいなのか。

気になった点を抜粋

p47 イノベーションボトムアップで進む。分権から生まれるもので、予測はできない。だからとってマネジメント不能ではない。マネジメントは可能だが、ただ、そのためには新しいマネジメントの手法が必要となる。そしてこの手法は、未来の大ヒットを生み出そうと考える現役アントレプレナーだけでなく、アントレプレナーを支援する人々や育てる人々、そして、アントレプレナーに責任を問う立場の人々も身につける必要がある。つまり、起業家精神の醸成は経営幹部の仕事というわけだ。 

p.108 MVP Minimum viable product MVPとは構築計測学習のループを回せるレベルの製品で、最小限の労力と時間で開発できるものをいう。実用最小限なので、後々必要となる必須機能さえもない場合がある。一方、MVPで余分にやらなければならない仕事もある。影響力の計測だ。プロトタイプを作り、社内のエンジニアやデザイナーだけがそのクオリティを評価したのではだめ。完成したプロトタイプは見込み客に見せてその反応を見定めなければならない場合もある。

p.128 MVPは製品デザインや技術的な問題を解決するためのものではない。基礎となる事業仮説を検証するためのものなのだ。

p.390
ソフトウェア開発に限っても同じ様な概念は「アジャイル開発」という形で、開発現場に定着し始めている。…エリック・リースの視点が新しいのは、こうした概念をプロダクトそのものの開発や企業のあり方にまで対象を広げて応用したことにある。…自動車業界で生まれた概念が、ソフトウェア開発に広まり、さらにプロダクトの開発や企業のあり方にまで影響を及ぼす様になったのは、時代の必然だと考えている。背景には、コンピュータやネットワークの価格帯性能比が飛躍的に高まり、それに応じて扱いやすいプログラミング言語や開発フレームワークが増えたことがある。この結果、一つのサービスを作るための敷居が劇的に下がり、短い周期で市場からのフィードバックを得ながら効率よくプロダクトを作れる様になった。イノベーションに必要なコストが下がり、小さな会社で大きなアイディアを実現する技術やインフラが整ったとも言える。