エドゥアルド・スエンソン, 江戸幕末滞在記, 講談社学術文庫, 2003.

江戸幕末滞在記は、幕末に日本に滞在したデンマーク人の日記。若き海軍士官の見た日本というサブタイトルがつけられ、当時の日本の様子が26歳のデンマーク人の視点から描かれている。

本屋でたまたま筆者がデンマーク人であることを知って購入したと記憶しているが、訳者の長島要一氏の講演を聞く機会があり、改めて本棚から取り出して読み返してみた.

こんな人にこの本を薦めます

デンマークに住んでいる人、幕末の日本を訪問した外国人、幕末の日本に関心を持つ者ならば、是非読んでみてほしい。若い士官にも関わらず、重要な会見などに参加したスエンソンが、外交官としての視点ではなく、裏舞台の目撃者として、また一人の若者として、異文化である日本を描いているのが興味深い。政治的な舞台裏(慶喜との謁見)や海軍士官としての船や乗組員の描写も興味深いながら(日本の乗組員の優秀さや日本の戦艦や漁船等について)、日本の風俗習慣にも興味関心を示し、率直な感想を述べているのだ。しかも、野蛮な未開国日本といった一方的な西洋人的観点ではなく、職人の優秀さや日本人が忘れている風俗(混浴風呂が普通だったとか、家にいても障子などを開け放して着替えをしているとか。少なくとも私は知りませんでした)が描かれていて、批判と同時に評価も示している点が好感が持てる。100年で日本は大きく変化したから、その当時の感覚が現在の日本に残っているとは思いにくいが、開放的、純朴な日本国民が自分たちの祖先であったということが、非常にいとおしく思えるのだ。