ジョセフ・ジャウォースキー, シンクロニシティ, 英治出版, 2007

シンクロニシティ[増補改訂版]――未来をつくるリーダーシップは、積ん読状態になっていたものを,仕事上の知りあいから改めて勧められて読んでみたもの。 一般的なビジネス本だと思って読み始めて驚かされた.物語形式となっているが,どちらかというとビジネス書よりもスピリチュアル系にカテゴリーされてもおかしくない内容だからだ.ただ,私個人に複雑な糸が絡み合いまさしくシンクロニシティが発生しているような状況にあったからこそ,最後まで読み進めた.最後に書かれているように,ビジネス書を普段読む人で,なにか現在の模索中で手がかりが得られるかもしれないと思う人だけが最後まで読むのだと思う.

 興味深かったのは,次の点

1. 私が個人的に存じ上げている成功されたシニアの方に見られる特徴と本書に書かれていることが,非常に合致すること.具体的には,人とのつながりや偶然の出来事を大切にすること,所有することではなく(物や人やお金が)流れることを重視すること,タイミングを逃さずにキャッチするといったような特徴だ.特に,"境界の消滅"や"強烈な高揚感と世界との一体感"(p.106)などと類似の言葉は,多くの人が言及している.精神世界への言及も共通する.

2. ディベートの国米国出身の筆者が,「ダイアローグ」という北欧で重視されているアプローチが世界のつながりには重要であると明確に述べている点.

 時間をとって定期的に集まり本物のダイアローグをすると,そうした活動の中核となるじっくり考える場を,すなわち「この世界に現れたがっているもの」によってもう一度ともに育んでもらう場を,すべての人が持ち続けられるようになるのである.p.193

3. シェルグループで実施されているシナリオプランニングのくだりも興味深い. 未来を作るということは,メンタルモデルを変えることで達成されるということ.シェルのシナリオプランニングに関しては,今後要チェックだ.

シェルグループでは,予測(それはつねにはずれるものだ)をたよるのではなく,決定のためのシナリオを使うことによって将来の計画を立てるのだ,と.ノーマンはこうも言った.シナリオプランニングとは,計画を練ることではなく,経営陣が事業環境や政界に対するメンタルモデルを変えるプロセスである,と.シェルグループにおいては,シナリオプランニングが組織学習のきっかけになっているのである.p.209

 4. 日本の文脈でも多く言及される「場」について,述べていること.

「場」というのは影響を及ぼす非物質的な領域であり,空間や行動を構築する目に見えない力だという.p.222

**どのあたりがお薦めか?

1. 今の状況に漠然とした不安を感じている,また 今後の方向性に悩んでいる中年にとっては,広い視点を持つための示唆になる.

2. 多くの知的に優れたまた世界的な視野を持つと呼ばれる日本人が登場すること.これは,私には,非常に刺激的だった.現在の日本にあって,現状に憂いてよくしようと努力している人が多々いるということが励みになる.

私は,個人的にも,自然の中で,境界の消滅や強烈な高揚感と世界のとの一体感を感じたことがある.あの時の感覚を思い出し,再度体験したいと心から願っているが,本質的な体験にはまだ出会えていない.近い将来に再度経験し,その結果として,自分がすべきことを見つけられればと願ってやまない.