Apocalypto, 2006

2006年に全米公開されたメルギブソン監督の映画アポカリプト。私は全く聞いたことの無い映画だった。実際見てるときにはエグ過ぎて目を逸らさざるを得ないシーンが沢山で、正直見るんじゃなかったと思いながら見たけれど、全体的にとても美しい映画で、見終わったあとからジワジワと余韻が深くなってくる、そんな不思議な映画でした。前述の通り、かなりエグイ描写が多いので、それだけで苦手と思う人は多いと思う。ただし、単なる恐怖映画やヴァイオレント映画というのではなくて、史実に基づいた描写が多いためにそうなったのだろうし、これを野蛮・野卑と片付けてはいけない。人権などが声高に叫ばれている今がある意味特殊平和な時代で、残虐な処刑や態度が非難されがちなんだけれど、歴史を振り返ってみると、生き抜くために野蛮でもっと本能に近い殺し合いの時代のほうが長く続いていたんじゃないだろうか。この映画、特に古代文明に少しでも興味がある人に見てもらいたい。古代文明がどの程度正確に描かれているのかは私には判断つかないが、その時代の生活や生がヴィヴィットにイメージする手助けをしてくれるまたとない映画だと思う。また、今の世の中に幻滅している人にぜひ見てもらいたい。あぁ、今の時代に生まれてよかったと思えるんじゃないだろうか。

特に興味深かったのは、アクションシーンと旧文明の描かれ方。アクションシーンは、映画のほとんどの時間を閉めているんじゃないだろうか。機転を効かせ逃げ回る主人公の美しい姿(ジャガー・パウ役、Rudy Youngblood)とカメラワークに、描かれる映像はエグイながらもうっとりさせられる。

マヤなどの旧文明は、まだまだわからない点が多い。そう、この映画は16世紀中央アメリカマヤ文明末期の話。映画の中では、脚色はされているとはいえ、宗教がどのような意味を持っていたのか、絶妙に描かれる。歴史の記録から、野蛮・野卑と今では考えられがちな行為が原始宗教とあいまって、人々の生活を支配していたんだろう、というイメージはあったとしても、画像として描きにくいことは確か。そんな時代でもおそらく「(その時代の人にとって)美しい人」や「上品な人」というのはいたのだろうし、出産や生と死が今とは比べ物にならないぐらい毎日身近にあったのだろう。

そうそう、語り部、祭り、出産などもこの映画に良いスパイスを与えています。