角田光代, 対岸の彼女, 文芸春秋, 2007

対岸の彼女 (文春文庫)は、たまたま出会った方にもらった本。昨日読んだ本と同じ著者の本を束のなかから見つけたので、読んでみました。高校生ぐらいまでは、小説ばかりを読んでいたが、最近は読んでいなかったことを改めて思い出し、感慨深かった。

考えたこと

角田氏の作品は、今まで読んだことはなかったが、「8日目の蝉」と同様に、女性が中学・高校で体験するいじめや女友達との関係や距離の取り方、それがいかに大人になってからも影響を及ぼしているかが描かれていて興味深い。影響を及ぼすからと言って、必ずしも悪影響が継続される訳でもなく、新しい世界が開けてくることがあることが描かれる。それが真実と言っていいかどうかは今の私にはわからないが、何度も繰り返される「私たちは何のために歳を重ねるんだろう」という言葉で作者が読者に問いかけたいのが分かる。この「主題」であろうことに関してというよりもその他の部分で表現される登場人物に語らせる言葉の一つ一つが心に響き、その意味で読んでよかった書籍の一つ。

... ひとりでいるのがこわくなくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいても怖くないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。p113

旅行ってさ、to seeとto doって二種類あるわけね、周遊して遺跡や博物館なんかを見るものと、お祭りなんかに参加するものと。だけど大前提にto meetってのがないと話しになんないよね。異国って「ここ」とはちがうじゃない、人はみんな分かり合えるとか、人間なんだから同じはずとか、そういうのは嘘っぱちで、みんな違う。みんな違うってことに気づかないと、出会えない。...p164