永井紗耶子, 広岡浅子という生き方, 洋泉社, 2015.

広岡浅子という生き方、この書籍、現在のNHKの朝ドラの主人公の話だ。おそらく、ドラマ放映のタイミングで出版された背景本なんだろう。ドラマ自体は、たまたま日本に帰国した時に、親がつけているから一緒に数回見たのみだけれども、今、日本では、それなりに人気の番組だと聞く。偶然見たのが、本書でもなんども言及されている炭鉱へ一人乗り込んでいったというくだりのところだった。

昨今日本では、女性の社会進出などが注目されているが、かつて、広岡浅子がおり、市川房枝がおり、村岡花子がいた。彼女たちの影響は今私たちはどう受け継いでいるんだろう?

どのあたりがオススメか?

1. ドラマの快活一辺倒の広岡浅子の姿が、折々の写真付き、近隣者のコメントつきで描かれているから、広岡浅子の多面的な姿に触れることができる。つまりは、単に快活なだけではなく、おそらく、女傑で歯煮もの着せない言い回しで、周囲の人から煙たがられたこともあったんだろうなという、という点などが見えてくるのが面白い。

2. 筆者の見解が所々に垣間見られるのが興味深い。読んだだけではわからない、筆者が調査したことで見えてきた広岡浅子氏の姿あるんだろうと思う。コラムなどが一番示唆に富んでいると思った。

3. 特に気になった部分を抜粋。

女性の社会進出の遅れが、列強と日本との差なのではないか...p.188

この国では男女を別々に教育しているのであって、人として教育していません。人は、男女ではなく、人なのです。この根本を忘れて男女の差別にこだわり、重くみすぎていると、宗教的にも、教育的にも社会的にも、間違っていくことになるでしょう。p189

女性の社会進出が進み、経済成長を遂げ、幸せ度も高いといわれる北欧に暮らしていて考えることを、すでに広岡浅子が言っていることに驚きを感じた。「女性が社会進出するために政府や企業が取り組んでいる対策」などに関して、日本から問い合わせを受ける時、言葉につまることがある。それは、私には、この国は、特に女性に特化した政策や対策をしているように見えないからだ。もちろん、女性が働きやすいような仕組みを整えたりなどはあるんだけれども、その根本にあるのは、人が人として、家族として、社会の一員としてよりよく過ごすための政策なのである。つまり、対象は女性ではなくて「人」であるという点だ。

4. 最後に、その強い女性が活躍するためには、その脇には、それを理解し支援する男性(恋愛対象の...ではなく、志を同じくする人たち)がいることもやはり重要なんだろう。