リンダ・グレキン、方向オンチな女たち、メディアファクトリー、2001.

方向オンチな女たちは、なぜ道に迷うのか、なぜ真逆に進んでしまうのか、なぜ地下から地上に出てきた人が直ぐに方向を認知できるのか、という私の長年の疑問に答えてくれるかもしれない...そんな気持ちで読み始めました。方向感覚が無い人にはもちろん、方向感覚のある人も周りにいる方向感覚の無い人を理解するためにもぜひ読んでもらいたい本です。ちなみに、私は、空間認知には自信がありますが、自他共に認める方向音痴です。

地図が読めない人はどうしたらいいのか

方向音痴であることは、遺伝的なもの、男女ホルモンが関係してくるという著者の主張は、非常に心強く感じた。更に、(学術的な妥当性はまだわからないが)どうしたらいいのかという点まで踏み込んでくれていて、研究者でない方が書いている利点を十分に感じます。

さて、「子供も迷子になる」の章のp89からの自分の子供が方向音痴だと気づいたら、親は何をしてあげられるのか?の項目が興味深い。外で遊ばせることで空間の関係性を理解し方向感覚を養えるといったTipsから、隠さずに自分がおこなっている対処法(目印の見つけ方覚え方など)を教える、写真やアイコンなどをふんだんに利用した地図を作成してあげるなど、すぐにできる方法が満載なのです。

更に、対処法として次があがっています。

デトロイトのオークランド大学教育学部教授、シャロン・ミューア博士によれば、空間能力にいくらか問題のある子供は、北に向かって座らせ、向いているほうが北だよとはっきり教えてあげれば、簡単に地図が読めるようになり、方角が分かるようになるそうだ。p91

私は一時期京都に住んでいたことがあるのですが、京都の人は、「北」を日常的に認識・把握しています。例えば、「待ち合わせは、出町(という場所)の北西の角ね」といったように。だから、北がドッチということは、日常的に鍛えられている感覚のはず。ということは、京都に住んでいる人は、方向感覚のいい人が多いのでしょうか?要調査です。

そのほか興味深い点

方向感覚について、著者が述べる興味深い点を何点か紹介します。

方向感覚は第7感であり、個性の一つ。

著者は方向感覚は第7感であり、個性の一つであるとしていて、IQの良し悪しや良く考えたり学習すればできるようなるといった類のことではなくて、眼がいいか悪いか、第6感があるかどうかといったことと同じように、個々の個性であると主張しています。だからこそ、一般に能力の高いといわれている医師も空間認知がうまくない人もおり、そんな人は、形を思い描くことが必要な解剖系には進まないとのこと。

方向感覚と空間認知には相関性がある

迷いやすい人は、幾何などで立体を回すことが苦手な人が多いのだそうです。つまり、空間認知が下手だから、迷いやすいとしています。

空間認知は男性ホルモンに関係している

空間認知は、男性ホルモンに関係してると考えられており、男女差がある。よって、統計上、男性のほうが空間認知が得意であるとされる。しかし、方向感覚に乏しい男性も少なからずいるのだ。男性だから迷わないということは無い。
迷いやすいといったことを、男女共に隠している場合も多いという。

空間認知や方向感覚が苦手な人には、それなりの対処方法が必要

考えさせるときに空間認知が苦手な人がいる。子供の頃、物理的なモノを使って物理的に回転させることで、仕組みを理解できるようになる人も多い。そのために、切り抜いた地図だとか、算数セットだとか手で回転させる道具を使い特別な教え方をする必要があるとしている。

「地図が読めない」に関しては、話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解くが定番ですね。そのほかにも、方向音痴を克服せよは非常に面白い記事でした。