西水 美恵子, 国をつくるという仕事,英治出版,2009.

国をつくるという仕事は、タイトルと見たときに、「国をつくる」なんて傲慢な考え方だ、と正直思った本。それでも読んでみようと思ったのは、その「傲慢な著者」の揚げ足取りをしたかったからかもしれない。しかし、読み始めたら止まらず、読了した正直な感想は、いくつかの納得いかない点はあるものの、この本を手に取って読んでみてよかった、である。

なぜこの本を薦めるか?

著者は、前世界銀行副総裁の西水美恵子氏。大学教授から転身し、世界銀行に勤めることになった方。その西水氏が世銀時代に草の根を歩き、各国のリーダと対峙した時の記録。西水氏の(おそらく当時批判が絶えなかった)「世銀」の体制を立て直すことにいかに注力したか、「草の根」をいかに自ら実践したか、という繰り返される筋書きや美しすぎる(著者による英語からの翻訳である)日本語には正直読んでいて疲れたが、それを補って余りあるほどの、私の知らない南アジアのブータンやネパール、バングラデシュ、パキスタンスリランカの姿が描かれている。日本にほど近い国のことを何一つ理解せず、関心を向けていなかった自分を恥ずかしく思うとともに、ひとつの視点をもらったことに感謝したい。世銀に興味がある人、国際開発に関心がある人、何か社会の役に立つことがしたいと思っている人にはぜひ読んでみてほしい。

さらにもう少し批判

Googleしていて見つけたサンチャイブログに書かれていたように(非常に良い書評だったので是非一読ください)、副総裁としてそれだけ頑張った後、成果は出ているのか?という疑問が残る。以前に世銀職員によって行われていた悪習慣を断ったとする彼女の数々の仕事には感服するが、良いことばかりが記録されていて、「本当か?」と疑問がわき出る。本人の失敗もあっただろうし、組織に根付いた悪弊(?)組織文化を変えるのはそれほど楽なことではないだろう。また、世界銀行副総裁として現地に赴いているわけで、歓待を受けるのは不思議じゃない。(現地民は食べられないであろう)おいしい現地料理が食べられたとしてもまったく不思議ではないのに、どこそこの料理はおいしいなどと言っているのは納得がいかない。私の知り合いで世銀職員としてインドの山奥に赴いた友人は、自称「世銀では使いっ走クラス」にもかかわらず、「すごい歓待を受けた」のである。副総裁であれば、どれほどの歓待を受けたかは、想像に難くない。